ユジノサハリンスクはサハリン州の州都ですが、人口20万人ほどの小都市です。
この町にはもの静かで心優しい人々が暮らしています。人と車の関係も、日本どころではない徹底した歩行者優先で、横断歩道の前に立つと、車が停まってくれます。すでに経済発展してしまった近隣アジアの国々とは違い、ゴチャゴチャした電飾看板や広告などない、すがすがしい「ロシアの田舎町」なのです。
ヨーロッパの都会のような見どころ盛りだくさんというわけにはいきませんが、1日くらいかけて、のんびり街歩きするにはちょうどいい大きさです。しかも、日本との歴史的なゆかりのあるスポットも多く、知的な刺激を受ける要素がいっぱいです。
サハリン観光局が作成したマップを頼りに、ユジノサハリンスク駅(вокзал Южно-Сахалинск)を起点に、主な見どころを時計の反対周りで見て回る散策コースを紹介します。
駅は地図の左手にあります。「вокзал」(ロシア語の「駅」)と正面にブルー字で書かれていて、一目でわかります。ここからサハリン鉄道最北の地ノグリキへの夜行列車が出ます。1906年12月開業で、1946年1月まで豊原駅でした(当時の駅舎の場所はいまとは若干ずれています)。
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駅前の緑地がレーニン広場(Площадь Ленина)です。ここには巨大なレーニン像がいまもなおしっかり立っています。
公園を抜け、そのまま駅からまっすぐ東へ延びるコミュニスチチェスキー通り(Коммунистический пр.)を歩きます。
正面に見えるのはユジノサハリンスク市役所(Администрация Южно-Сахалинска)。ビルの横に、いかにも社会主義的なモザイク画が置かれています。ここに描かれているのは、トナカイを飼う先住民族、工場労働者、航海士と漁民、そして軍人です。彼らこそ、サハリンを支えている人たちというわけです。
その先の通りの右手に映画館「オクチャブリ(Октябрь)」があります。ここでは毎年のように日本総領事館主催の日本映画祭などが開かれています。
以前本サイトで紹介したおしゃれなカフェ「クーリビン(Кулибин)」は通りの向かい側にあります。
映画館の先に、突然昭和にタイムスリップしたような空間が現れます。昭和3年(1928)に建てられた旧豊原町役場です。建物の周辺には芝生があり、正面の当時植えられたエゾマツが巨大に成長している光景には、時間の経過を強く印象づけられました。
その先にはサハリン州行政府、通りの向かいには現在軍施設として使われている旧樺太庁があり、さらに歩くとチェーホフ劇場(Сахалинский Международный театральный центр им. А.П. Чехова)があります。
普段はクラッシックやジャスのコンサート、ロシアの近現代演劇の公演があります。
劇場の裏手に、19世紀末にサハリンを訪れたチェーホフの足取りをたどるチェーホフ記念文学館(Музей Книги А.П.Чехова “Остров Сахалин”)があります。
正式名は「А.П.チェーホフ著『サハリン島』博物館」。「犬を連れた奥さん」などの作品で知られるロシアの文豪チェーホフは、1890年、当時流刑地であったサハリン島を訪れ、懲役制度の実態について綿密な調査を行いました。
その後、彼は『サハリン島』を発表し、サハリンの実状が広く知れわたることになったのです。この文学館ではチェーホフのサハリンにおける業績を中心に、19世紀のサハリン流刑囚の生活用品などが展示されています。
その先は、サハリン州郷土博物館(Сахалинский Областной Краеведческий Музей)です。この建物は、日本時代の昭和12年(1937年)に樺太庁博物館として建てられたもので、当時流行していた「帝冠様式」の威風堂々としたものです。建築家の貝塚義雄が設計しました。
そのまま通りをまっすぐ歩くと、ロシア正教会(Воскресенский собор)が見えてきます。